メーカーとしての想い
「生きている、すばらしさを。」 代表取締役社⻑ 松本光⼀インタビュー
性欲は、食欲や睡眠欲と同じ根源的な欲求で、生きている限り誰にとっても大切なもの。性を表通りに誰もが楽しめる社会を目指して、創業以来TENGAではさまざまな取り組みを行ってきました。
「食」のように「性」も自然に楽しめる社会をつくりたい。創業18周年を迎え、年商100億円を達成しようとしている今、TENGAが目指す新たな「未来のカタチ」を、創業者である松本光一に聞きました。
性を表通りに。創業当時から変わらない想い
株式会社TENGAの創業当初から、僕にはずっと変わらない目標があります。それは、「人がより豊かに生きるために、性に関する世の中の価値観を変えていきたい」ということ。
性欲はもともと、食べることや眠ることと同じく人間に備わっている欲求の一つで、尊重されるべきものです。性欲があるのは何もおかしなことではないし、それは人を愛する気持ちや命をつないでいくプロセスにも直結しています。なのに、多くの人は性について語ること、もしくは性欲を持っていることに、なんとなく罪悪感や恥ずかしさを感じていますよね。でもこれって自然なことなので、そう感じることもないと思うんです。
かつて、アダルトショップの中でさえ、どこか後ろめたげにこっそりと売られているアダルトグッズを目にして、「性は人間の根幹を支えているはずなのに、何故こんなに特殊なものとして扱われるんだろう?」と間違ってると感じたのが、僕がTENGAを作ろうと思ったきっかけでした。
性のカタチは人それぞれ。自由な形で性を楽しめる世界へ
さまざまな事業・ブランドやプロジェクトを通して、TENGAはずっと、「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」というミッションのもと活動を続けています。
「性を表通りに」というのは、オープンに猥談しようといった意味ではなくて、性をそこにあるものとして自然に受け止め、人それぞれが自由な形で性を楽しめる状態にしたい、ということです。たとえば、グルメな人が「美味しいお店めぐりが趣味」と言ったり、オシャレ好きの人が「このブランドが好き」と言ったりしても、誰も違和感を抱かないでしょう。
でもそれが性のこととなると、世の中の反応がちょっと変わってきます。親しい友人同士でも「性生活をより楽しむ方法」や「オススメのセクシャルなアイテム」といった話題を扱うことには、抵抗を感じる人が多いはず。僕が、そしてTENGAが変えていきたいのは、まさに「ここ」なんです。
過剰な気恥ずかしさや後ろめたさを払拭して、みんながもっと自由に性を楽しむこと。
食事やオシャレと同じように、「性の豊かさ」が日常を彩る幸せの1つのカテゴリーとして認知されること。
そんな世界の実現こそが、TENGAという会社全体で創業以来掲げ続けてきた目標です。
僕らは、性生活を豊かにするアイテムをお届けすることで、全ての人をもっと自由に幸せにしたい。世の中を、より楽しくてワクワクするものにしていきたいのです。
TENGAが行う全ての事業は、たった1つの想いから生まれた
これまでTENGAカンパニーは、「性を表通りに」を実現すべく様々なブランドを展開してきました。
男性向けアイテムを扱う『TENGA』、女性向けアイテムを扱う『iroha』、スキンシップのためのアイテムを扱う『CARESSA』。さらに、性機能に悩みを抱える人を医療的な観点からサポートすべく、『TENGAヘルスケア』を設立。また、性の素晴らしさをより身近に感じてほしいとの思いから、アーティストとともにアパレル・雑貨などを制作するプロジェクト『TXA-TENGA by Artist-』を立ち上げました。
これらの事業内容は、一見バラバラに見えるかもしれません。しかしこれらは全て、「性を表通りに」というミッション、そして「性を豊かにするアイテムを通して、人をもっと幸せにしたい」という想いから生まれています。企業がやるべきことは「人に喜んでもらうこと・役に立つこと」それしかありません。また、それは企業が存続・成長できる唯一の方法です。
誰かの役に立てることや、人に喜んでもらえることって、すごく嬉しいですよね。自分が頑張った仕事が誰かの役に立ったと実感できれば、それが次の仕事を頑張る力にもなります。人に喜んでもらうことで、自分も嬉しくなれる。会社とは、それをチームで行う場なんです。
一人では難しい大きなことをみんなで協力して成し遂げ、それが世の中の人に喜ばれる、その繰り返しで会社は成長していく。僕にとって会社の成長は、たくさんの人に喜んでもらえた証そのものなんですよ。
2022年に始動した『able! project』は、僕が今まで会社を通して感じたその喜びを、多くの人に感じてほしいという想いから生まれました。このプロジェクトは「障がいのある人が働く喜びと、働くことに対する対価を得て、自立した人生を送るための取り組み」として立ち上がりました。
ものづくりの技術を学びながら働ける就労支援施設(able! FACTORY)を中心に、様々な活動を行っています。障がいの有る・無しに関わらず、誰もが「働く喜び」「人に喜んでもらえる嬉しさ」そして「できるの喜び」を感じられる環境を作りたい。そのためにこれからも様々なチャレンジをしていきます。
今はまだないものを生み出して、世界中に喜びと驚きを届けたい
人の性がより豊かになれば、世界はより豊かで楽しい場所になると信じています。でもそんな世界に近づくためには、世の中にある「性=恥ずかしい、後ろめたい」という意識を変えていく必要があります。
TENGAという製品はその最初の一歩を踏み出すことができたと考えています。TENGAは、既存のアダルトグッズとは異なる新しいジャンルで「性」の楽しみを提供するために、コンセプト、デザイン、品質など徹底的にこだわり抜いてきました。おかげさまで現在では、ドラッグストアや量販店、百貨店、大手通販サイトなど、ごく身近な場所で気軽に手に取れる、そんな存在になりつつあります。
でも目指す本当の目標は、まだまだ達成できていません。「人がより豊かに生きるために、性に関する世の中の価値観を変えていきたい」……冒頭で述べたこの目標を実現するためには、世の中に今はまだ無い「新しいカテゴリー」を生み出す必要がある、と僕は考えています。
性を豊かにしたいと願うことが当たり前に認められ、誰もが素直に楽しめる世界。人それぞれの多様な「性」を自然な言葉で伝え合い、互いに認め合うことができる社会。新たなカテゴリーとは、そんな状態にある「性」です。
僕は子供のころから「今はまだないものを生み出して、世界中の人に、驚きや喜びを届けたい」ということに憧れがありました。それがエネルギーになってもいます。電話でもパソコンでもない「スマホ」という新しいカテゴリーが誕生し、生活の一部になったように、恥ずかしくも後ろめたくもない「自然とそこにある、自由な性」というスタイルが普及したら、世界はもっと優しく楽しい場所になるはず。
全ての人に、生きているすばらしさを。性をより豊かにすることで、そんな世界に一歩ずつ近づくことができると、僕たちはそう信じています。