PRIDE SCHOOL
第1回PRIDE SCHOOL卒業生インタビュー『20代のトランスジェンダー女性Rさん』の場合
2020年10月11日から約1ヶ月間にわたり、株式会社TENGAと株式会社JobRainbowがタッグを組んで開講したPRIDE SCHOOL。
これまで選択肢の少なかったLGBTQ+が“自分らしいキャリア”を掴めるよう、同じ境遇の仲間達と高めあい、ロールモデルと出会える日本初の「LGBTQ+向けオンラインキャリアアップスクール」です。
その第2回開講が決まったことを記念して、「PRIDE SCHOOLを卒業して人生がどう変わったのか」を、全3回のインタビュー形式でご紹介します!
第1回のインタビューに答えてくださった卒業生は、20代のトランスジェンダー女性Rさんです。初めての就職や安定した就業を目指す「スタンダードコース」を受講していた彼女は、受講当時、就職活動を目前とした学生でした。
彼女の人生は、PRIDE SCHOOLを通じて、どう変化したのでしょうか?
応募前のホンネ 〜「わからないことだらけ」だったから〜
当時、女性として生活を始めてしばらく経っていましたが、女性用のスーツも着慣れないし、webの説明会も参加するのが不安でした。「周りからどう見られているかな、バレないかな」と心配で、オンラインだからこそ何とかちらほら参加できましたが、周りに就活生がいないのもそれはそれで心細くて。
PRIDE SCHOOLはたしかTwitterで知りました。
「仲間ができるのかな」と少し期待しつつも、初回開催ということでセキュリティ面はちょっと怖かったです。冷やかしもいるんじゃないかな、とか。でも、事前に志望動機や意気込みを送るなど、応募に対するハードルがきちんと設けられていたのは安心材料になりました。
何より、応募する前は「これからの就職活動、何をどうすればいいんだろう」「どのように自信をつけていけばいいんだろう」とわからないことだらけで、だからこそ「この機会を逃したくない」と思いました。
応募をきっかけに「落選した時に自分はこれからどうすればいいか」をしっかり考えられたのですが、当選を知った時はやっぱり嬉しかったです。
いざ開講が目の前に迫ると、「やばい、始まっちゃう!怖い!」と吐き気がしたほどでしたが(笑)、開校式とキックオフパーティーを終えると「これを機に前向きに変われるかもしれない」と思えました。
受講中のホンネ 〜「転職してもいいんだ」〜
受講中、zoomのカメラをオンにしなくていいと言ってもらえたのは、受講生として安心でした。中には受講期間中、ずっとカメラオフの人もいましたが、顔が見えなくても、交流するうちにその人がどういう人かだんだんわかってきましたし。3つに分かれているクラスのうち、私のいたイエロークラスは考えをしっかり持った真面目な方が多くて、「大人だなぁ」と勉強になりました。和やかな雰囲気で、セクシュアリティについて話すこともあまりなかったので、ホームルームの時間は授業前にほっとできる大切なひとときでした。
講義はスピード感があって、意識的に頭の回転を速くする必要があるな、と感じました。ふだん学校で誰かと意見を交換したり、自分の考えをすぐに言葉にしたりするタイミングがなかったので、かなり鍛えられましたね。「セクシュアリティについて話しても話さなくてもいい」という環境のおかげで、自身のセクシュアリティについて心配せずに済み、授業に集中できました。
課題の中では、「1分間自己PR」は特に難しかったです。1分間の自己PRを1週間かけて練るというもので、考える時間がたっぷりあったからこそ、クオリティも求められるというか。
中でも、特に実りがあったのは「先輩社員対談」でした。
今までの私は、「新卒ってすごく頑張って、いいところに入らなきゃいけないんだ」と勝手にハードルを高くしていました。
でも、中途採用の先輩社員の方々と数多くお話するなかで、「転職を経ていい会社に出会えた」といった体験談も聞けて、気持ちがすごく楽になりました。「転職を“いいな”と思える人ってこんなにいるんだ」というか。「こういう考えもあるんだ」といろんな人の価値観を知る中で、ガチガチだった思考が柔らかくなっていきました。他の受講生も、先輩社員対談が凄くよかった、と言っていました!
あ、卒業発表はキツかったです。3人チームで3日間毎日5〜6時間、じっくり話して。大変でしたけど、「こういうこともっとやりたかったよね(笑)」って話が出るくらい充実していました。
どこまで具体的に考えればいいのかな、というのがわからないなか、メンバーと話しあってゼロから形作っていく難しさを知られました。「実際に行う前提」という条件に縛られて消去法で考えてしまったのは、今となってはもったいなかったです。
スクール卒業後 〜初めてのカミングアウト〜
入学時には「就職活動って何をすればいいのかな?」と不安だった私でしたが、PRIDE SCHOOLのいろんな講師の方が切り口を変えて伝えてくださった、「性別は本質ではなく、あくまで自分のいち要素で、“自分をどう伝えるか・自分がどうしたいか”が大事」と気づいてから、就職を現実的に考えられるようになりました。
今までは勇気がなくて行けなかった企業説明会にも、現場を知る・声を聞くって重要だよな、と思って参加できるようになれましたし、積極的に質問するようになれました。
PRIDE SCHOOL卒業式の翌日、インターンシップに参加する予定の会社に、初めてカミングアウトしました。
インターン中いつか話すことにはなるだろうな、とは思っていたのですが、ついに勇気を持って動けました。
担当の方は、「話してくれてありがとう。私もLGBTのことをもっと勉強していかないといけないし、わからないことがあったら聞くかもしれないので、その時はよろしくお願いいたします」と、とても親切で。
現場でも「お手洗いは自認する性の方でいいですよ」と言ってもらえましたし、信頼して、自分自身の性別を気にせず1週間インターンに集中できました。
繰り返しになってしまいますが、PRIDE SCHOOLに参加して「大切なことは性別ではない」とセクシュアリティに関して不安を抱え過ぎないようになって、前向きになりました。受講前と後で、ここは本当に段違いです。
アフタースクール 〜仲間がいたから乗り越えられた〜
卒業生が自由に参加できるSlack上のチャンネル「アフタースクール」には救われました。
就活の面接で、とある企業の方に性別のことを話したとき、自認する性別で働きたいと伝えました。でも「そういう人は今までいなかったし、仕組みや決まりを整備するのはすごく労力もいるし難しい」「1人のためにそういう取り組みができるかと言われれば、うちがもたなくなるかもしれないし、入社の来年までにっていうのも難しいと思う」と言われて。
上層部の方に話してもらえるのか、それとも人事の判断としてもう面接は受けないで欲しいという考えですかと尋ねると、「正直なところ受けないで欲しい」って。率直にいうと、企業のビルを出た時「こんな会社潰れちまえ!!」と怒りが湧きました(笑)
でも帰り道、そんなに落ち込んでいない自分に気づいたんです。これを報告できるPRIDE SCHOOLの仲間がいるしな、と。昔の自分なら「死にたい」とか思って乗り越えられなくてもおかしくないんですけどね。
アフタースクールでこれを報告した時、講師の星賢人さんや他の卒業生からたくさんコメントをいただいて、悔しさではなく喜びの涙が溢れました。本当に、心の支えで。
あと、講師の星さんが「相手ともっと話すと、変わることもあるかも」「自分だったらこういう風にするかも」とか、「こうした方がいいよ」とは違うアドバイス・体験談を伝えてくださって、「今後この会社を受ける人たちのために、自分も何かしたい」と思いました。
結局、再びその会社の面接を受けられることになったのですが、それはもう面接というより話し合いの場だったので、LGBTに関することとか、世の中にはこういう人がいてこういうことに困っているとか、自身の体験を交えてお伝えしました。
普通の面接では30分しかとってくれないところ1時間面接時間を設けてくださっただけでなく、面接前には動画などで事前に勉強もしてくれていたみたいで。
アフタースクールの仲間がいてくれたからこそ苦しいことを乗り越えられましたし、未来の人のために動けたかな、と思います。
おわりに 〜受講を考える未来の皆さんへ〜
苦労も多かった就職活動ですが、第一志望の企業に自身のセクシャリティをカミングアウトしたうえで内定をいただくことができました。
結果的に、私はその会社から内定をいただき、入社することになりました。社会に出ることは半分楽しみですし、半分不安です。就職先の会長は「性別は人間の本質じゃないし、Rさんと働きたいと思ったから採用したんだよ」と言ってくださった一方、社長からは「他の人にもカミングアウトしておいた方がいいんじゃない?」みたいなことも言われて。
でも、どこで生活していても「会話の中でついポロッと」みたいなアウティングの危険性はあります。なので今後も当事者を含めて皆が働きやすい環境にするために働きかけていきたいですし、その過程で自分自身も成長していけたらなって思います。
第2回PRIDE SCHOOLに参加するか悩んでいる皆さんも、「参加したい」と思ったらぜひ参加していただきたいです。「参加したいな」と思ったのに、不安でやめるのは本当にもったいないです。
「自分を変えたい」という想いがあれば、ぜひ参加してください!
「変える」チャンスで、「変わる」チャンスです。