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研修会「福祉職の性支援と多職種連携」参加レポート

研修会「福祉職の性支援と多職種連携」

2023年2月21日(火)、国分寺市障害者基幹相談支援センターが主催する研修会「福祉職の性支援と多職種連携」にて、「able! FACTORY」の施設長・木村利信がゲストスピーカーとして登壇。

TENGA社として障がいのある方向けの事業に取り組む背景などをお話しました。

 

able! FACTORY(エイブル・ファクトリー)とは
株式会社TENGAが運営する就労支援施設。就労継続支援B型事業所として、障がいのある方に就労機会を提供するとともに、アパレル制作・PCリペア・カフェ運営などの多様な仕事を通じて、就労訓練などの福祉サービスを提供しています。

 

研修には、福祉関係者、学校関係者ら53名が参加されていました。

 

東京都教育庁 都立学校教育部 学校健康推進課 笹渕真子(ちかこ)さんが講師として登壇され、日本の性教育の現状や障がい当事者における支援、障がいがある方の性の問題に対してどう向き合うべきかを講話。

 

第二部では障がい者のセクシャルウェルネスについて、参加者同士がグループワークを行っておられました。

 

 

研修の詳細

【講師プロフィール】

 

■講師 笹渕真子(ちかこ)さん 
東京都教育庁 都立学校教育部 学校健康推進課 課長代理
養護教諭として23年間勤務し、うち20年は特別支援教育に関わる。

 

現在は、東京都におけるプレコンセプションケアの施策に従事し、若い世代のヘルスケアの推進や、特別支援学校での性教育の充実、現場の養護教諭とともに産婦人科の学校医の支援を受けられる環境づくりに挑戦中。

 

障がいの有無に関わらず「性」を楽しむこと、その環境を提供できる社会には、一人でも多くの理解者が必要だと感じている。

 

 

 

 

■ゲストスピーカー 木村利信 
株式会社TENGA 就労支援施設「able! FACTORY」施設長
文教大学卒業後にエンジニアになるが、高校時代の友人の交通事故がきっかけとなり、障害者福祉施設でボランティアを始める。

 

以後障がい福祉に20年以上従事。特に障がい者の就労支援を中心に活動を行ってきた。

現在は、各種委員会の委員の仕事と法人の仕事をしながら、エンジニアの経験を生かし、福祉機器の開発などを行なっている。

 

 

講演「支援者のための性教育」 笹渕真子さん

【日本における性教育の現状】

 

性の健康は誰に対しても肯定され、確保されるべきものですが、日本での性教育の遅れは障がいの有無に関わらず大きな課題となっています。

 

2018年に成育基本法*が公布されたことで、性教育やユースヘルスケアが推進されるようになりましたが、いまだ日本における性教育の課題は数多く存在します。

 

例えば、生理の時の体の変化や心身の不調について、異性である男性はもちろん、女性であっても知らないケースが多く存在します。

 

特に、障がい者の場合は、自身の体の不調について把握すること、周囲に伝えることは困難な場合があります。支援者として当事者のセクシャルウェルネスを保つためにも、性についての正しい知識を付けるのは重要です。

 

*「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律」

 

【セクシャルウェルネスを保つために必要なこと】

 

セクシャルウェルネスを保つために必要なことは次の4つ。

 

「性とセクシュアリティに関する包括的で良質な情報を入手すること」

「自分たちが直面する可能性のあるリスクや無防備な性行為による有害な結果に対する自分たちのぜい弱性に関する知識を持つこと」

「セクシュアル・ヘルス・ケアを受けられること」

「性的健康を肯定し、促進する環境での生活」

 

保護者や支援者は、この4つを当事者に提供できているかを常に考える必要があります。

 

【障がい者のセクシャルウェルネス】

知的障がい当事者の方の性の悩みとして挙げられるものは、陰部を触ってしまう、人との距離が保てない、マスターベーションが上手くできない、などが挙げられます。

 

「障がいがあるから仕方ない」などという理由で適切な対応が得られなかった場合、成人期になった時に問題行動などに繋がってしまうこともあります。

 

支援者は、「その行動は大人がやっていても大丈夫か」と常に自分に問いかけることが必要です。

正しい行動への誘導・声かけを行うと共に、声かけを行う際は常に同じ場所で同じ指示を行うことを心がけましょう。

 

 

株式会社TENGA事業紹介 木村利信

 

 

株式会社TENGAでは、「生きるをよろこぶ世界へ」というパーパスのもと、すべての人が性を楽しめる社会の実現のために、様々な取り組みを行ってきました。

 

性は人間の根源であり、誰にとっても大切なものです。

 

TENGAカンパニーには、男性向けプレジャーアイテムブランドのTENGA、女性向けブランドのiroha、性の悩みや問題を解決するためのTENGAヘルスケアなど、さまざまなブランドが存在します。

 

 

その中でも、障がいのある人の就労と自立を支援する取り組みが「able! Project」です。

就労継続支援B型事業所の「able! FACTORY」では、オリジナル製品の製造・販売、PCの修理や、併設された「able! CAFE」での接客や調理などを行っています。

 

 

 

収益は作業を行う利用者への工賃や、障がいのある人の支援のための寄付に還元しています。

今後は障がいのある方の「性に対する相談」も受け付けていく予定です。

 

障がいのある方のセクシャルウェルネスについては、まだ情報を得られる場も少ないかとは思いますが、TENGAだからこそできる支援活動や情報発信を行っていくことで、当事者の方や支援者の方の悩みの解消に繋がればと思います。

 

 

【ワークショップ】

「世の中にはいろいろな価値観がある」「グループで課題を解決してみよう」

 

参加者は各グループに分かれ、障がい者支援の現場で実際に起こりうるセクシャルウェルネスに対する課題について、「賛成」、「反対」、「どちらかといえば賛成/反対」のそれぞれの立場でディスカッションを行いました。

 

講義の内容を踏まえ、課題解決のためには何が必要か、どういったケアを行うべきか、懸念すべき点は何かなどを話合いグループごとに発表。

 

講師の笹渕さん、ゲストスピーカーの木村がフィードバックをしました。

 

 

課題の例:「知的障害のある小学2年生の男の子。暇があれば陰部に手をやり、おちんちんをさわっている。家庭でもこの行動はやめさせたいが、何度注意してもやめないと母から相談があった。母の相談を受けた職員から、職員ミーティングでこの行動はやめさせるべきだと意見が出た。」

 

 

ご参加の皆様にTENGA製品の紹介

 

 

研修終了後、別室にてTENGA製品の展示・紹介を行いました。

 

男性向けブランドのTENGA、女性向けブランドのirohaのプレジャーアイテムを中心に、実際に製品に触れてもらいながら使い方などを参加者に説明。

 

手に障がいがある方や握力の弱い方向けの自助具「TENGAカフ」「irohaカフ」の展示もあわせて行いました。

 

会場では製品についての質問や、障がい者支援の現場で製品をどのように取り入れるかなど、質問や交流が活発に行われていました。

 

 

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