PRIDE SCHOOL

【後半】JobRainbow 星賢人×TENGA 西野芙美 特別対談「PRIDE SCHOOLが目指すもの」

LGBTQ+が“自分らしいキャリア”を掴めるよう、同じ境遇の仲間達と高めあいながらロールモデルと出会える、日本初の「LGBTQ+向けオンラインキャリアアップスクール」こと「PRIDE SCHOOL」。
今回、第2回の開講を記念して、このスクールを支える株式会社JobRainbow CEOの星賢人さんとTENGA 国内マーケティング部 部長の西野芙美による特別対談を実施しました。

 

 

 

本当に当事者のためになるCSR 〜インパクトの共創〜

TENGAはそんなPRIDE SCHOOLへの想いに共感して、一緒にやろうと提案したわけですね。

星
びっくりしました。私が勇気を出して打ち明けた問題を「本当に解決したい」と思ってくれたのかな、と嬉しくて仕方ありませんでした。
手前味噌ですが、JobRainbowは「LGBT × 就職」領域の第一人者だと自負していたので、「絶対にいつか自分たちがPRIDE SCHOOLを実現するぞ」とどこかで思っていて。そのためお声がけしてくださったのが嬉しかったですし、TENGAさんとJobRainbowがコラボしたら、インパクトがありそうだなと。実際、「この2社が?」とSNSも盛り上がり、一緒にやれることにワクワクしましたね。

 

西野
西野
何人くらいが応募してくれるか不安でしたが、いざ募集を出してみると短期間で100人近くの方からご応募いただきまして、星さんにお伺いしていた「就労に悩む当事者」がこれだけいるのかと実感しました。
また、「TENGAがこんなことやる必要あるの?」とネガティブに見られないかヒヤヒヤしていましたが、「こういうこともする企業なんだ」「JobRainbowと手を組むのいいじゃん」という反応もあり、良いインパクトが生まれたことに安心しました。

 

 

今回初の共同プロジェクトでしたが、始めたときはどういう気持ちでしたか?

西野
西野
JobRainbowさんのスピード感や社風が素敵で、不安はありませんでした。
課題解決のために何をすべきか意識し、PDCAを回すことを当然とする少数精鋭のJobRainbowさんと、組織が複雑ではなく小回りの利くTENGAだったから、動きが噛み合い、短い準備期間で充実したカリキュラムを組めました。

 

 

星
あと、「いつか実現したい」と思いながらコンテンツを作成してきていたので、ノウハウも体系的に蓄積されており、スムーズに進みましたね。
クライアントワークだと「お客様のやりたいこと」を実現するためにコミュニケーションが煩雑になり、結果として思い通りに実現できなかったりしますが、今回TENGAさんは「私たちがしたいこと」を全面的にサポートしてくださりました。
「寄付して終わり」ではなく、「こういうコンテンツはどうだろう?」「リリースのタイミングがここだと、こういうインパクトがあるだろう」など戦略面からがっちりと伴走してくださって。

 

我々は広報・PR面が未熟ですので、西野さんからいただくアドバイスは刺激的でした。「カミングアウトデーに合わせてリリースする」という期日があるので、「そこに合わせるとこうなるよね」とゴールから逆算したため、焦りもありましたが(笑)。

 

西野
西野
個人的には、PRIDE SCHOOLによって「CSRの新しい形」が作れたんじゃないか」と思っています。色々な企業の話を聞いてみると、CSRを「経費部門」とみなし、「やっている感」出すために寄付だけしておくか……という考えの企業も多く感じます。

 

その点、PRIDE SCHOOLは社会貢献をしつつ、インパクトを生みつつ、みんなを幸せにするために共創する、新たなCSRのフレームワークを作れたと思っています。それがなぜ実現できたかといえば、本質的な社会課題の解決を優先するJobRainbowさんと一緒に取り組めたからだと思っています。

 

 

PRIDE SCHOOLの過去と未来 〜ハブとなって社会を変える卒業生〜

そうして始まったPRIDE SCHOOLですが、約1ヶ月半の講義を経て無事に卒業された皆様はどうなったのでしょうか。

西野
西野
卒業から1年も経っていませんが、みなさん「自分らしく働く」を実現するために動き出していますよね。先日、卒業生にアンケートをとってみたのですが、「就労環境に変化があった」方が43%もいらっしゃいました。

 

1ヶ月集中して濃密な時間を過ごすと、入学当初に比べて話し方や表情、考え方が変わる方もいました。最初は引っ込み思案だった人が、最後の成果発表会で「これからどうしたい・どうがんばりたいか」を自分の言葉で、自信を持って話してくださるのを見て、「これだけ人生を変えられるプログラムなんだな」とうるっと来ました。

 

 

星
印象に残っている受講生が2人います。1人目は、応募締切30分前まで悩んでいらっしゃった社会人のNさんです。
Nさんは、「PRIDE SCHOOLに参加して、意味あるのかな?」と思いながら受講を決めたそうですが、そんなNさんは卒業後、自主的にオンライン忘年会を企画してくださって、そのおかげで卒業生同士の繋がりが活発になりました。Nさんが職場でカミングアウトしたのも、PRIDE SCHOOLに入って「自分以外にもこんな辛い思いをしている人がいるなら、今の会社で第一人者になればこれからこの会社に入る何人、何十人が働きやすくなるんじゃないか」と思ってくださったから、だそうで、それが嬉しかったです。

 

 

西野
西野
コミュニティとしても機能しているのが嬉しいですよね。
というのも、オンライン参加にしたのは、コロナの影響だけでなく、現地参加にしてしまうと都市部に住んでいない方が参加できなくなってしまうから、という理由もありました。
オンラインだからこそ参加できた方もたくさんいらっしゃり、そうした方々が連帯できることが、支えになっていたように思います。

 

星
印象に残っているもう1人はRさんです。
PRIDE SCHOOL卒業後に就職活動の面接でカミングアウトしたとき、面接官から否定的なことを言われたり、「前例がないから受け入れられない」と一度面接を拒否されたそうです。

 

結局その会社の面接を受けられることになり、再び嫌な思いをする可能性もありましたが、他のLGBTQ+の方のために「当事者はこれくらいいて、こういう困難を抱えていて……」などPRIDE SCHOOLで学んだことを丁寧に伝えてくれて。
しかも最終的に、Rさんは第一志望の会社に就職できたんですよね。PRIDE SCHOOLで一緒に育んだ想いが、しっかり他の誰かへと伝わっていることに感動しました。

 

我々だけだと数が限られてしまいますが、受講生が周りに伝え、周りの人がさらに他の人へ……とインパクトは波紋のように大きくなります。
こうしたハブとしての機能が生まれたのも、「ボトムアップ型でスキルを高める+社会を変える人材を作る」という2つの軸がPRIDE SCHOOLにあったからだと思っています。

 

 

 

西野
西野
PRIDE SCHOOLの先輩社員座談会に参加した後、就活・職場でカミングアウトした方がかなりいらっしゃったんですよね。

 

星
そうなんですよ。もちろん本質的には「カミングアウトする必要のない社会」が理想ですし、カミングアウトする/しないは本人の自由です。
ただ、想像できないことに取り組むのってすごくハードル高いですよね。実際に当事者が職場でカミングアウトしてどんな変化があったのか、逆にしなかった人はどうなるのか、など参考にできる人が周りにいなかった方が多かったんだと思います。
でも座談会で「カミングアウトするとこういういいことがあるのか」「ここはまだ心配だな」などと考える材料が手に入ったのかなと。

 

あと、PRIDE SCHOOLでは一貫して「心理的安全性」を最優先にしていました。
当事者にとって、ふだん学校・職場などどこにいても基本的に心理的安全性はありません。でも、PRIDE SCHOOLで「心理的安全性があるとこんなに自分の気持ちが話しやすくなるんだ」と気づくと、そこから「じゃあうちの職場ではこれが足りないな」「次働くならこういうところがいいな」と地図を描けたみたいで。
たまに当事者の方で「わざわざLGBTってカミングアウトしなくていいじゃん」「嘘をつけばいいじゃん」と言う方がいます。私もかつては、「わざわざリスク背負う必要ないよな」と思っていた1人です。

 

でも、いざカミングアウトしてみたら、めちゃくちゃ生きやすくなりました。これって、カミングアウトしないとわからないんですよ。PRIDE SCHOOLでこのことを伝えられたと思っていますし、それを知る卒業生が活躍すれば、他の当事者が「今って実は抑圧されているんだ」と知るためのロールモデルになってくれるかなと。

 

 

第2回が開講しますが、意気込みや今後の展望についてうかがってもいいですか?

西野
西野
去年はスタート時期の関係もあり、スピード重視でカリキュラムを考えましたが、結果的にはすごくいい内容ができました。今回は前回に比べて練る期間も長く、より充実した内容にする自信があります!

 

あと、前回は初めての開催ということもあり手探りな部分も多くなりましたが、どういう内容が必要で、どう足並みを揃えていくか、といった部分が見えてきました。なので、第2回はさらに満足度高く、快適に受講していただけると思います。持続性があるいい活動だからこそ、いろんな人に知ってもらうべく努力していきます!

 

星
うちの会社のバリューには「インパクトの最大化」があり、常に広がりのある取り組みを心がけています。
PRIDE SCHOOLは、対象が限定されているように見えますが、参加した数十人が変わり、その人たちをハブとして他の人・社会が変わっていきます。前回の反省を踏まえつつよりよいものにしていきたいですし、ボトムアップ型でありつつ、社会を変える発信にもしていきたいです。なので、いろんな人に参加してもらえる入口を作りたいです。

 

初回は得体が知れなかったかもしれませんが、今は輪郭もはっきりしてきたと思いますし、なにより受講生が「PRIDE SCHOOLってこういうものだよ」と体現してくれています。
そんな姿を見て「この人みたいになりたいな」と思って来てくれる人が増えたら、また新しいPRIDE SCHOOLを作れるのかな、とわくわくしています。どんどん濃い内容にして、質を高めていきますよ!

 

PRIDE SCHOOLが3回、4回……とさらに続けば、卒業生コミュニティは100人、200人……とどんどん増えていきます。歴代の卒業生たちがリアルで会えるイベントが、いつかはできたらいいな……なんて思っていますので、皆様とお会いできることを楽しみにしています!

 

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